メガネの値段は何で決まるのか。三つの内訳を解説
同じトレイに並べた二本のメガネが、細部まで似ていながら、価格は三倍違うことがあります。その差が実際どこから来るのか、項目ごとに、マーケティング抜きで説明します。
試着のたびに出る質問です。なぜこちらはこの値段で、あちらはずっと安いのか。答えがロゴにあることはまれです。答えは三つの具体的な項目にあります。フレーム、レンズ、そしてその二つをお客様の顔と度数に合わせるオプティシャンの仕事です。この三行を明示しない見積書は、肝心な部分を隠しています。
- メガネの価格は、フレーム、レンズ、オプティシャンの仕事という三つの項目に分かれます。
- フレームでは、ブランド名よりも素材と仕上げ工程の数がはるかに大きく効きます。
- レンズでは、屈折率、コーティング、そして中心位置合わせの精度が差を生みます。
- 高価でも調整の合っていないメガネは、良いメガネではありません。
一つではなく、三つの項目
「メガネ」の値段として提示される金額は、実際には互いに無関係な三つのもの合計です。
フレームは工業製品です。素材があり、製法があり、かかった時間があります。レンズはお客様の度数に合わせて作られる光学製品で、屈折率とコーティングがあります。オプティシャンの仕事はサービスです。測定、枠入れ、アイポイントの位置決め、フィッティング、そしてその後のアフターケア。
度付きメガネでは、レンズが請求額の半分を占めることがよくあります。強い度数ではそれ以上になることもあります。最も見落とされやすい部分でありながら、掛け心地を最も左右する部分です。
フレーム、素材にかかる費用
プラスチックのフレームがすべてアセテートというわけではありません。価格の差はまずここから始まります。
セルロースアセテートは植物由来の素材で、板状で届き、そこから一本ずつフレームを削り出します。削って形にし、磨き、熱を加えて顔に合わせます。質の良い板は、使えるようになるまで数か月かけて乾燥させます。この時間が価格に反映されます。
一方、射出成形のフレームは、プラスチックの粒を溶かして金型に流し込んで作ります。工程は速く、再現性が高く、費用は数分の一です。同じようには調整できず、経年変化に弱く、修理も基本的にできません。
金属も同じ理屈です。一般的なスチール、モネル、チタン、ベータチタンは、重さも、汗や潮風への耐性も、価格も違います。熱帯では、その差がすぐに表れます。詳しくはアセテートか金属か、フレームの選び方と手入れで解説しています。
フレーム、時間にかかる費用
素材が同じなら、残る違いは工程の数です。
職人の手によるアセテートフレームは、数十の工程を経ます。切り出し、フライス加工、丁番の埋め込み、テンプルの組み付け、段階的なやすりがけ、数日かけたバレル研磨、検品と手直し。工程ごとに人の手が動きます。つまり人件費がかかり、時間がかかります。
工業生産のフレームは、この工程を圧縮するか、省きます。丁番は埋め込まずに接着し、機械研磨ではなく薬品による速成の艶出しを行い、一本ずつの検品はありません。店頭ではそれなりに見えますが、一年で状態が落ちます。
その中身はハンドメイドフレームができるまで、工房の工程を一つずつでお見せしています。手仕事のフレームの価格は、イメージへの上乗せではありません。数えられる工程の積み重ねです。
フレームは、美しいから高いのではありません。時間がかかったから高いのです。そしてその時間は、2年経つと目に見えてきます。
レンズ、請求額の見えない半分
レンズの価格を上下させる変数は三つです。
屈折率。 度数が強いほど、標準的なレンズは厚くなります。屈折率が高ければ、同じ度数でもより薄く、より軽く仕上がります。その技術には費用がかかり、一定の度数から先でなければ意味がありません。その境目は薄型レンズ、薄くする価値があるのはどんなときかで説明しています。
レンズの種類。 単焦点レンズは一つの距離を矯正します。累進レンズは三つの距離を矯正し、その領域は一人ひとりに合わせて計算されます。計算の複雑さも製造の精度も比較になりません。価格も同様です。
コーティング。 反射防止、傷がつきにくい硬化処理、UVカット、カラー、偏光。いずれも素のレンズに追加されます。入門クラスのARコーティングと上位クラスのARコーティングでは、細かいひび割れが出るまでの年数が違います。同じ処方箋でも価格差が大きくなることがあるのは、これが理由です。
誰も別項目にしない仕事
見積書には表れない行でありながら、そのメガネで快適に過ごせるかどうかを決めることの多い部分です。
オプティシャンはお客様の測定を行い、それぞれのレンズの光学中心を瞳孔の正面に合わせ、レンズをフレームに枠入れし、フレームを顔に合わせて調整します。中心位置が2ミリずれているだけで眼精疲労が起き、その原因がメガネだと気づくまでに何週間もかかります。
そのあとにアフターケアが続きます。無料の再調整、鼻パッドの交換、丁番の締め直し、保証。オンライン販売にはないサービスで、メガネを使い続ける年月のなかで確かな価値があります。
掛け心地は価格ではなく調整から生まれます。詳しくはフレームの重さ、掛け心地を本当に決めるものをご覧ください。
見積書を読み違えないために
四つの質問で、何にお金を払っているかが分かります。
- フレームの素材は何で、どう作られているか。 アセテートか射出成形か、チタンかスチールか、ハンドメイドか工業生産か。
- レンズの屈折率はいくつで、自分の度数に見合っているか。 弱い度数に高い屈折率を選んでも得るものはありません。
- どのコーティングが含まれ、どれがオプションか。 ARコーティングは明記されるべきで、含みで済ませてはいけません。
- アフターケアに何が含まれるか。 調整、保証、破損時の交換、製作期間。
正当に高いメガネは、四つすべてに明確に答えます。理由なく高いメガネは、一つ目でつまずきます。
長い目で見た価値
基準になるのは表示価格ではなく、1年あたりの価格です。安価な射出成形のフレームを12か月ごとに買い替えると、5年掛けて無料で調整し続けられるアセテートフレームより高くつきます。そこに、数字にならないものが加わります。しっかり保ち、直せて、いつまでも顔に合い続けるから、手放さずに済むメガネです。
Maison Mata のフレームが何でできているのか、素材、工程、仕上げをBehind the Craftのページでご紹介しています。手仕事のフレームと工業生産のフレームを実際に手に取って比べたい方は、バリ島の店舗へお立ち寄りください。説明より先に、手が違いを感じ取ります。